弱拍天動説と弱拍地動説

人はかつて地球が宇宙の中心に存在すると信じていました。人間が、自分が立っている場所が動いているということを理解するまでに何百年もの時間が必要でした。これと同じことが音楽のリズムでも起こっています。 音楽のリズムでも「 弱拍の位置は動かない「強拍の位置が動いている」しかし強拍の上に立っている人は、そのことが認識できず弱拍の不可解な動きに頭を悩ませるのです。 ─── この弱拍の不可解な動きを簡単に説明するものがこの弱拍天動説です。

弱拍天動説と弱拍地動説

弱強リズム認識を持つ人(=ストレス拍リズム言語を母国語として話す人)は、リズムニュアンスを演奏する時に、弱拍位置を基準位置として固定し強拍位置を移動することでニュアンスを醸し出す習慣を持っています。

一方、強弱リズム認識を持つ人(=モーラ拍リズム言語を母国語として話す人)は、リズムニュアンスを演奏する時に、弱強リズム認識を持つ人と全く逆に、強拍位置を基準位置として固定し弱拍位置を移動することでニュアンスを醸し出す習慣を持っています。

なお日本の演歌では、伴奏側が強拍位置を基準位置を固定する役割を担い、歌唱者はその固定した強拍位置に対して、自分自身の演奏する強拍と弱拍の両方を移動することでニュアンスを演奏するという習慣があります。これは弱拍の位置が必ず固定になる弱強リズム認識と大きく異なる特徴です。この事については後述します。

この時、強弱リズム認識を持っている人は、この弱強リズム認識を持っている人のリズム認識を正しく認識することが出来ないという現象が起こります。

強弱リズム認識の人が弱強リズム認識のニュアンスが理解出来ない様子はあたかも、天体の動きを天動説で捉えると理解が困難になる様子とにています。

弱拍の位置が基準になっていることに気付けば全ては単純な動作に見えますが、強拍位置が基準になっていると認識していると途端に全てが複雑な動作となって見えてきます。

移動しているのは、自分が足をおいている強拍だった ─── それに気付く瞬間はまるで、天動説の人々が太陽が動いていると思っていたものが、実は自分たちが立っている地球自身が動いていると気付く瞬間ととても似ています。

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