世界は3ⁿ拍子で出来ている
グルーヴの本質は多重になった3拍子である ─── 3ⁿグルーヴ理論 の序論として世界中の3拍子の音楽を御紹介致します。ジャズの起源となったゲーリック及び黒人教会音楽リズムへの理解を深めることが演奏上のグルーヴ力を向上させます。そしてこれは英語のリズムの起源を知る旅と言い換えることも可能です。 ジャズのリズムの起源、そして英語のリズムの起源を感覚的に理解するための礎として、ここで世界中の3拍子/9拍子/27拍子の音楽を御紹介致します。
これらの音楽は決して理解が容易いものではありませんが、ジャズのスイングやR&B、ファンクなどのグルーヴとその本質は共通です。何度も聴いて聴き馴染むことで、現代的なグルーヴの感覚を養いましょう。
ここで紹介している音楽は全て3拍子を多重化したリズムを持っています。これらの音楽のリズムはとても複雑でしばしば難解です。しかし、これらを何度も聴いて慣れ親しむことはグルーヴに対する深い造詣を与えてくれます。
月の光(チッコリーニ)
Terry Reiley の The Padova Concert から The Discovery
Philip Tagg 先生が作ったスコッチスナップを使ったリズムの音楽
音楽史学者のフィリップ・タグ先生が作ったスコットランド民謡のリズムを使った音楽Inama - Diamond Platnumz ft Fally Ipupa
2020年頃にインターネットで世界的に流行したタンザニアのミュージシャン・ダイアモンド・プラチナムさんの音楽・Fally Ipupa氏をボーカリストとしてフューチャした。Pray for Me - Moses Tyson Jr.
ゴスペル音楽。モーゼス・タイソンJr. はスライ・ストーンのいとこで、スライストーン氏の進めでギターを弾き始めた12歳以来の長い経歴をもっている。Pray for Me - Richard Mr.Clean White
伝説的なゴスペルミュージシャンであり司教のリチャード・ミスタークリーン・ホワイト氏の演奏する Pray For Me
Footprints · Miles Davis
マイルス・デイヴィスの名演・フットプリンツVirgo - Wayne Shorter
But Beautiful - Grant Green
Moses Tyson Jr. / Near the Cross
ゴスペルのスタンダード曲 Near the Cross は27/8拍子の曲です。Radiohead のCodex
小節長は変化しないままで 12/8 及び 9/8 を入れ替える、アフリカ南部の音楽とヨーロッパの民族ケルト族の一派であるゲール族の音楽に共通して現れるジャズの起源となったリズムが、レディオヘッドのこの曲にも表れます。
Homecoming / John Abercrombie - The Gateway Trio
ジョン・アバークロンビーの The Gateway Trio の演奏で Homecoming です。27/8拍子=アフリカの鼓動とゲールの魂のハイブリッド音楽 ─── この英語の根底に流れているリズムがジャズに反映されています。
ゴスペルのスタンダード曲 God will Supply
God will Supply サブディヴィジョンが 3x3x3 で構成される 27/8 拍子です。ニア・ザ・クロス/ミシシッピ・マス・クワイア(コーラス)
ニア・ザ・クロス/ミシシッピ・マス・クワイア(コーラス)The Mississippi Mass Choir - Near The Cross /Credit : Malaco Music https://t.co/c2UXcARa8D
ウォーク・イン・ザ・ライト/モーゼス・タイソン・Jr
【27/8拍子=アフリカの鼓動とゲールの魂のハイブリッド音楽 ─── それがジャズ】 3小節/3拍子/3連符=27/8 拍子の名曲です。 モーゼス・タイソン・Jr ウォーク・イン・ザ・ライト Credit :Walk In The Light Moses Tyson Jr.
ウォーク・イン・ザ・ライト/アレサ・フランクリン
【27/8拍子=アフリカの鼓動とゲールの魂のハイブリッド音楽 ─── それがジャズ】ウォーク・イン・ザ・ライト/アレサ・フランクリン(1987年のライブ演奏)
チャイコフスキー交響曲第4番第1楽章
チャイコフスキー交響曲第4番第1楽章は、3拍子16分音符/スコッチスナップ/尻合わせリズムが多用されています。 ロシア国立交響楽団/指揮ターイェ・ミッケルセン(ノルウェー)State Academic Symphony Orchestra of Russia, conductor Terje Mikkelsen, Symphony No.4, 1st movement https://youtube.com/watch?v=iE9LhoKEmBk
Zone III (Live) / Then! / Then! (Remastered) Allan Holdsworth
アラン・ホールズワースの Zone III という即興曲です。 アルバム Then! に収録されています。 これは 16分音符/3拍子/3小節で構成されるリズムです。これはつまり 72/16= 8x3x3/16 という拍子で 12/8 を拡張したリズムともいえます。 Zone III (Live) / Then! / Then! (Remastered) Allan Holdsworth https://
ホーリー・ワン Dominique Johnson / Holy one
無名のB3オルガンの名人・ドミニク・ジョンソン氏の演奏でホーリーワンです。アナイシャのホーリーワン
Anaysha - Holy Oneトラマイン・ホーキンスのホーリーワン
実は、HOLY ONE のオリジナル演奏者は、このトラマイン・ホーキンスなのだそうです。 この演奏は、更に、更にパワフルな演奏でしたしかも、もう遥か昔に絶版になり存在も確認出来ない様な無名のアルバムです。 Tramaine Hawkins Holy One https://youtube.com/watch?v=QAbIVf
ラオス民族音楽ラム・バンラン・シヤンラカントーンの孫を育てる老人
ラオス民族音楽ラム ラムローンヤーオ・孫を育てる老人 タイ東北の監督・鬼才シーカンソーのプロデュース 歌・バンラン・シヤンラカントーン ลำล่องยาว ผู้เฒ่าเลี้ยงหลาน ชุด ติดไม้ติดมือ โดยสี คันโซ่ ลำโดย บันลังก์ เสียงระฆังทอง https://youtube.com/watch?v=pNmazwラオス民族音楽ラム スィウィト・チャオナー(農民の人生) 歌・チャウィワン・ダムヌン
ラオス民族音楽ラム スィウィト・チャオナー(農民の人生) 歌・チャウィワン・ダムヌン(民謡ラムの名人) ฉวีวรรณ ดำเนิน - ชีวิตชาวนาアラン・ホールズワースのプロトコスモス
Radiohead / Daydreaming
このRadiohead - Daydreaming の映像が他の Radiohead の映像と一線を画している様に感じるのは、決して気のせいではなく、実はこの作品は米国の鬼才フィルム作家 Paul Thomas Anderson とのコラボ。エンニオ・モリコーネ「インテルヴァッロ2」
Ennio Morricone – Intervallo II
Wrapped Around Your Finger Dianne Reeves With Bob Belden Ensemble
譜面上は8分音符だが、ずれによってその三倍の速さでの三連符三拍子を表現する。これがラテンに於けるベース打点のニュアンスの基礎になる。 16分音符の裏拍位置が基準となり、8分音符の表拍位置が遅れる。 裏拍は短く切られ音の止まる位置で標準的な表拍の位置を表現する一方、表拍は遅れて長く弛緩した表情を表現する。
ドン・プーレンのリッスン・トゥー・ザ・ピープル
譜面上は8分音符だが、ずれによってその三倍の速さでの三連符三拍子を表現する。これがラテンに於けるベース打点のニュアンスの基礎になる ─── その2 【ラテンに於けるベース打点のニュアンスの基礎】16分音符の裏拍位置が基準となり、8分音符の表拍位置が遅れる。 裏拍は短く切られ、その音の止まる位置で標準的な表拍の位置を表現する一方、表拍は遅れて長く弛緩した表情を表現する。
チッコリーニのジムノペディ1
チッコリーニのジムノペディ1 ─── 究極の三拍子のニュアンス チッコリーニのジムノペティ1 チッコリーニが85歳の時の演奏(2010年) ─── 極めて短い極めて衝撃的な演奏 https://youtube.com/watch?v=0peXnO
John Taylor - Speak to Me
イギリスの天才ジャズ・ピアニスト (1942〜2015 ) 幻の名盤 Decipher から Speak to Me スイングバラードの3連符を3拍子に見立て、更にその中を3で分割する 3^n リズムの実例になっている。Credit : https://youtube.com/watch?v=k7mRBdhAtZc
ノルウェーのクランパスのマーチ
9/8 (3拍子3連符) が現れています。このリズムはインド・東南アジア・東アジアの民族音楽には表れないリズムです。 9/8 (しばしば27/8や36/8)は、アフリカとゲール(現スコットランド・アイルランド)の音楽によく見られます。
Aphex Twin - QKThr
Aphex Twin - QKThr
(最初の1拍は休符)
3|3|3 =9=3*3 (INTRO)
4|4|5|5 =18=3 * 6
3|2|2|3|2 =12 = 3*4
3|3|3|3|3|3 =18 = 3*6
3|3|3|2|3|3 = 17 = 3* 6 -1
3|3|3 =9=3*3 (OUTRO)
(最後の3拍は休符)
Bobo Stenson Trio -Dormattan
Bobo Stenson Trio -Dormattan 北欧ジャズのフリーテンポの様に聴こえるリズムはしばしば 9/8 拍子で演奏されます。
Spaceflight Simulator の旧テーマ曲
君を探してサラカムへ帰る
ตามน้องกลับสารคาม(君を探してサラカムへ帰る) ตามน้องกลับสารคาม(マイ・ピロンポン)の演奏です。
ビートルズ
ビートルズは、ゲール文化の影響を色濃く受けています。
1. 家系的な背景
ポール・マッカートニーの母(モヒン家)はアイルランド系です。リヴァプールには19世紀の「ジャガイモ飢饉」がきっかけで移民が起こったことから、現在でも多くのアイルランド系住民が暮らしており、カトリック文化を色濃く反映した労働者階級的な文化が根付いています。
ジョン・レノンの祖父ジェームズ・レノンはダブリン出身です。ジョンレノンはアイルランド系の文化を受け継いでいると言えます。
ジョージ・ハリスン リンゴ・スター については明確な記録はありませんが、アイルランド文化の影響が強いリヴァプール出身なのでアイルランド的な影響を受けていたと考えられます。
2. リヴァプールとゲール文化
リヴァプールは第二のアイルランドと呼ばれるほどアイルランド移民が多く、ゲール文化の影響を強く受けている都市です。カトリック信仰、民謡や物語の伝統、そして労働者コミュニティの結束などが、この街独特なゲール文化を色濃く残す雰囲気を形成しています。
3. ビートルズの音楽とゲール的要素
ビートルズは、ゲール音楽のバンドという訳では決してありませんが、その音楽にはアイルランド文化及びケルト文化が含まれています。
ポールのメロディー感覚には、アイルランド民謡のような歌いやすい抒情性があると言われています。
ポールのソロ曲「Mull of Kintyre」では、スコットランドのバグパイプが多用されており、ケルト文化の影響を思わせています。
4. 文化的な象徴性
ビートルズのメンバーはゲール語が話せる訳では決してありませんが、英国ポップス文化と、アイルランド/ケルトの労働者階級文化の融合を体現していたと言えます。ビートルズの国際的な躍進によって、アイルランド/スコットランドの民謡的伝統が世界に広まる契機となりました。
ビートルズのメンバは公式な国籍としては英国ですが、出身地リヴァプールという場所柄がもたらす文化と血筋を通じて、ゲール/アイルランド文化の影響を受けており、これが音楽的感性にも受け継がれています。
アイルランド・スコットランドとゲール語の関係
- ゲール語 : ケルト語派に属する言語群。
- アイルランド : ゲール語文化が多く残る地域。
- スコットランド : アイルランドからの移住を契機に独自のゲール語を発展。
- 文化的意義:両地域において、少数言語化しながらも民族的遺産・文化的誇りの象徴として保持されている。
1. ゲール語の言語的位置づけ
ゲール語(Gaelic)は、インド・ヨーロッパ語族に属するケルト語派の一分枝である。現在も使用されている主なゲール語には以下がある。
- アイルランド語(Irish Gaelic / Gaeilge) ― アイルランドで話される。
- スコットランド・ゲール語(Scottish Gaelic / Gàidhlig) ― スコットランド高地や西方諸島で話される。
- マン島語(Manx Gaelic / Gaelg) ― マン島でかつて話され、20世紀に一時的に死語化したが、近年復興運動が進んでいる。
2. アイルランドとゲール語
アイルランドはゲール文化およびゲール語の起源地とされる。古代アイルランド語(Old Irish)は約1500年前に成立し、広く拡散した。現代のアイルランド語は現在もアイルランド共和国の公用語の一つであるが、日常生活では英語が優勢である。
3. スコットランドとゲール語
5世紀から6世紀頃にかけて、アイルランドからスコットランド西部に移住したスコット人(Scoti)がゲール語を持ち込み、やがてスコットランド高地を中心に広まった。中世以降、ゲール語はスコットランドの主要言語の一つとなったが、現在ではヘブリディーズ諸島を中心に少数言語として存続している。なお、スコットランド政府は公式に言語的地位を認めている。
4. 文化的関連性
アイルランド語とスコットランド・ゲール語は深い言語的親縁関係を持ち、語彙や文法に共通点が多い(スペイン語とポルトガル語の関係に近い)。また、ゲール文化は口承伝統、音楽、詩作などを重視しており、バラッド、バグパイプ、物語芸術などにその特徴が見られる。さらに、両地域においてゲール語は、英語化(Anglicization)に対抗する文化的アイデンティティの象徴ともなっている。
Norwegian Wood - This Bird Has Flown (ノルウェーの森)
You’ve Got To Hide Your Love Away (悲しみはぶっとばせ)
Lucy In The Sky With Diamonds (ルーシーは宝石と空に)
She’s Leaving Home
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